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AI活用時代にどう備えるか
生成AIに代表される現在のAIブームは一過性のものではなく、今後間違いなく仕事に必須の要素となるでしょう。いずれは今のパソコン・スマートフォンのように「使えて当たり前」くらいの位置づけになるはずです。
そこで私自身が時代に取り残されないよう、AI活用時代に備えるために現時点での理解と考えられる備えをまとめてみました。
パソコン・スマートフォンは道具としてみると「高度で複雑」ですが、それらと比較してAIには「高度で複雑」かつ「掴みどころのない難しさ」を感じます。基本的なアルゴリズムや仕組みについては調べればある程度学べますが実際にどのような振る舞いをするのか、どのように私の仕事の役に立つのかについては完全な予測・制御はできません。
何となくすごい結果が得られて、何となく満足している。そんな方が殆どではないでしょうか。今のところ私もその1人です。
何となく使っていてもすごいことができる。私はここに怖さを感じます。今のうちから(あるいはもっと昔から)AI活用時代に備えて様々な想定のもとでAI活用に取り組む人々と、何となく現状に満足して備えを怠っている人々の間には決して追いつくことができない大きな差が生じるのではないか。それが怖いです。
ただ怖いだけでは前に進めないので、私なりにできることをしておこうとAI活用に向けた備えのポイントを書き出してみます。
AIとは何か?
まず相手を知らないことには対策を立てることができません。ただ私はAIの専門家でもないし特別頭が良いわけでもないので詳細に掘り下げることはせず、シンプルに抽象化する路線でまとめてみます。
AIとは何か?それは「めっちゃたくさんの情報を学習して、めっちゃたくさんの情報を処理してくれるもの」だと思います。
例えば数学の勉強をする場合。人間であれば「公式を覚えて、公式に当てはめて問題を解く」ということをします。私も受験勉強の際はひたすら公式を覚えて問題を解く練習をしました。そして今は殆ど忘れてしまいました。AIも基本的には人間と同じような手順で賢くなっていくと思われますが、扱える情報量とスピードが桁違いです。そして人間のように忘れることがありません。コンピュータの性能向上により扱える情報量とスピードは年々パワーアップしていきます。
AIの弱点は?
単純な力勝負では人間に勝ち目はなさそうです。人間がAIに勝つとしたらどのように?AIの弱点とは?
まず考えられるのがコンピュータ上で動作する仕組みですので電源の供給が断たれればAIが動作することはできません。…近い将来、電力不足の問題も深刻化するでしょうが私の手には余る課題ですし今はこちらについては触れずにおきましょう。
もうひとつは「デジタルデータでなければ学習も処理もできない」です。例えば人間が新種の植物を発見した場合、その情報を一切デジタル化せずに口伝や手書きのみで伝達する限りAIがそれについて知ることはあり得ません。ただ、人間であればその体に備わったセンサーである五感(視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚)を通じて対象を認識し知ることができます。
数学の公式や問題もデジタル化してAIに学習させたり処理させない限りAIが人間を超える働きをすることは一切なくなるはずです。
もちろん、ひとたびデジタルデータをAIに供給しさえすればAIはとても優秀に働きます。例えば気象観測においては人間の五感では正確に捉えきれない風速・気温・湿度…など多くの情報がセンサーを通じてデジタル化され、AIはそのデジタルデータを処理し、人間には不可能な精度で天気を予測します。
「デジタルデータをAIに提供する裁量は人間が持つ」ことが大前提となっていますが「人間にデジタルデータの供給を絶たれる」ことがAIの持つ致命的な弱点といえるでしょう。
映画「ターミネーター」「マトリックス」の世界のようにAIが自律行動しはじめるとこの前提は崩れてしまうわけですが。
AIを活用する備えとは?
ついつい変なプライドが刺激されAIに対して勝つことを考えてしまいましたが…この記事の目的はAIを活用するための備えを明確にすることです。
冒頭で述べた「AI活用に備えている人」「AI活用に備えていない人」というのは具体的にどういうことなのでしょうか。
誰よりも賢いAIを開発する…に関しては私には無理なのであきらめることにします。そうなると残るは「AIに提供するための十分なデジタルデータを保有する」ことが私に取れるAI活用の備えの1つということになるのではないでしょうか。その路線でちょっとだけ掘り下げてみましょう。
まず、AIに提供可能なデジタルデータはざっくり次の2つに分類されます。1つ目は「誰でも見られる一般公開された情報」、2つ目は「限られた人(および組織)しか見られない非公開情報」です。
一般公開された情報の活用
1つ目の「誰でも見られる一般公開された情報」については主にインターネット上のデジタルデータとして人間にもAIにも等しく提供されています。新たな創作物が次々生み出されインターネット上に公開されていき、まだ紙でしか存在しない古文書のような情報も有志の活躍により逐一デジタル化されていきます。
一般公開された情報の範囲でAIを活用する限りにおいては扱えるデータ自体は平等です。よって扱う人間側の知識やスキルによって差別化がされるでしょう。理解できる言語が多ければより多くの情報を対象とすることができますし、専門知識を有する分野に関してはより高度で的確なAI活用ができるでしょう。
AIを道具として活用する人間そのものの力を高めておく。目的を達成するために必要な能力を身に着けておく。これはAIを活用する/しないに関係なく必要な備えですが、多くの情報処理に長けたAIの普及により、備えの有無による差がより顕著に表れる、つまりより大きな格差となる可能性が高いです。
また、少し視点を変えて一般公開情報を自らアウトプットしていくということも重要でしょう。SNSマーケティング・集客はもはや定番です。そしてSNSの裏側にはSNS運営が制御するAIが存在します。私も集客活動の一環としてYouTubeというSNSに動画を投稿していますが、私が投稿したデータをYouTubeのAIが自動的に解析してそれを欲するだろう視聴者に自動的に広めてくれるのです。AIに自分のデータが活用されるほど情報をアウトプットした人に有利に働くシーンは多く存在します。
非公開情報の活用
2つ目の「限られた人(および組織)しか見られない非公開情報」についての代表例は会社組織内のデジタルデータでしょう。これはその会社に属する適切な権限を持つ人間にしか見ることができません。
そして一般公開情報は世界中の多くの人の手により爆速でデジタル化が進みますが、非公開情報に関しては会社内の人間(私のような個人事業主であれば私個人)でデジタル化をしなければAIに提供することすらできません。例えば口頭のみで交わされる貴重な情報は関係者以外の誰にも知られることはなく、AIに活用されることもなく消えていくのみです。
そもそもAI以前から、コンピュータが登場する以前から、情報を仲間に伝達したり記録して後世に残すことは「人間が進歩するため」「差別化し他者に勝つため」の最も重要な手段です。コンピュータやAIが登場することによってより扱える情報量と処理スピードが向上しよりインパクトが大きくなったということです。
会社組織内における情報伝達が適切にできているか。会社組織内に情報が蓄積されているか。この2つが基本としてあり、さらに「デジタル化されているか」という条件が加わったということです。
例えば会議をおこなう場合、従来通りの会議室に集合しての開催であってもTeamsのようなオンライン会議の仕組みを取り入れてレコーディングすることによって会議の内容がデジタル化されます。そしてCopilot for Microsoft 365(以下Copilot)という生成AIサービスを利用していれば議事メモを自動で生成してくれますし、「会議のどこかで〇〇の約束をしたんだけど、どんな内容だっけ?」とCopilotに尋ねると「会議の34分13秒の部分で会話している〇〇のことですね」というように超優秀な秘書のような返しをしてくれます。デジタル化するだけではなくAI活用の経験も積むことができてしまうわけです。
AI活用の格差により負けるリスク
非公開情報のデジタルデータ保有量は「データ収集に携わる人間」×「取り組んだ時間」のように決まります。データ収集の仕組みが多く長く取り組むほど有利です。
私は仕事で多くの会社に対してMicrosoft 365の導入・利活用支援をおこなってきましたが、この範囲だけで見ても会社ごとのデジタルデータ保有量にはすでに相当な格差が生じています。保有量だけで勝ち負けが決まるものではありませんが、規模の大きな戦い、ランチェスター戦略でいうところの「広域戦」であるほど保有量は大きな格差となって結果にあらわれるはずです。
「AI活用に備えている人」たちは昨今の生成AIブーム以前からデジタル化の重要性を理解し、その活動を継続しています。私のような個人事業主では正確に把握すらできない規模の想像以上の格差があると思うと絶望すら感じます。
あきらめるのはまだ早い!
たとえ業界のトップでリーダーと言える有名大企業であっても保有する情報には多くの欠落があるはずです。例えばある製品に不具合がありリコールとなった際にその原因と対策を的確に提示できることは多くあります。しかし日々の生産管理において正確に記録されていない情報があれば原因の特定に時間がかかりますし実質迷宮入りとなり推測を元にした対策にとどまることもあります。「リコール隠し」のような不祥事になるとそもそもの情報が隠蔽されているので原因究明自体が不可能に近いレベルです。
現時点では予防と原因究明が困難な「〇〇隠し」系の問題もAIの力をもってすれば、日々のコミュニケーションを解析し矛盾点や情報の欠落(隠蔽の可能性)を洗い出し、早期にアラートを出す「監査の自動化」なんてこともできるでしょう。それには日々のコミュニケーションをできる限りすべてTeamsやSlackなどを用いた「デジタル化」していく必要があります。
ミスや不祥事から大ダメージを受けるリスクを軽減したい強者ほどこういった「めんどくさそう」なデジタル化にも取り組むニーズがより高まるのではないでしょうか。
また、業界トップでなくとも生き残りの競争を勝ち抜くための備えとして取り組むのであれば、今から本腰を入れてデジタル化に取り組むということでも遅くはありません(逆に言えばそのくらい会社におけるデジタル化は遅れています…)。
私のような個人・小規模事業であればデータ保有量に関しての勝ち目はありませんが、ランチェスター戦略における局地戦・接近戦のような勝ち筋においては他者が持ちえないスペシャルなデータを蓄積することは十分に可能なはずです。人間には創造力があります。無いものを作れば自分だけのものです!
まとめ
酒の席のとりとめのない会話のようにダラダラと続けることもできますがいったんまとめましょう。AI活用時代にどう備えるか。
1.人間そのものを磨く。仕事・趣味・家族との時間…あらゆる経験を重ね成長する。よく勉強する。
2.一般公開のデジタルデータをたくさんアウトプットする。非公開のデジタルデータをたくさん保有する。
3.今からでも遅くない。勝ち筋は必ずある。
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