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【DX推進】絶対に成功すると思った施策が失敗するワケ

「この仕組みは素晴らしい。導入したら皆喜んでくれるはず!」「ローコードを使いアプリを作れるようになった。社内評価も上がるはず!」こう確信して推進している案件が思いのほか低評価だったり、トントン拍子で進む想定だったのに周囲が付いてこず停滞したり…こういった失敗(および誤算)はビジネスにおいて意外と良くあることです。

私自身、こういった失敗を経験したことは数知れず(自慢になるのか微妙ですが)、少しでも良い結果に辿り着くにはどうしたら良いかといった事が少しずつわかってきました。

絶対に成功すると確信した時ほど失敗時の精神的ダメージは大きく、それが組織ぐるみとなれば関わった人達の評価に関わるといった事にもなりかねません。そういった最悪のケースを回避するにも役立つであろう考え方/取り組み方をまとめたいと思います。

特にYouTubeやネット情報を元に独学主体で頑張っている皆様にとっては、こういった事も意識していただくと業務における実践でより良い結果が出やすくなると思いますのでお役に立てれば幸いです。

なお、私自身の事業内容からIT利活用・DX推進をテーマとした書きっぷりになっていますがITに限らずビジネス一般で通用する内容になっていると思います。

私自身が経験した主な失敗パターンについて

会社勤め10年、個人事業主8年の私ですが、プログラマー/システムエンジニアからスタートして現在はMicrosoft 365 / Power Platform等の利活用支援をメインとした活動をおこなっています。IT活用に課題をお持ちのお客様へ解決策の提案をおこない、その施策内容によりアプリ開発をして納品したり、技術レクチャーをしたりといった仕事内容になります。

お客様の規模は個人から中小企業、大企業まで様々です。ITの商材であるため業種も多岐にわたります。長く仕事を続けているとそれなりにお客様の失敗に立ち会う経験も蓄積されていきます。

失敗のパターンは大きくわけて「お客様の組織内の都合や問題によるもの」「私の提案が良くなかったもの」の2つです。どちらか片方が原因の事もあれば両方が組み合わさってしまう場合もあります。今回はDX推進に関わる方向けの記事になりますので「お客様の組織内の都合や問題によるもの」に注目して見ていきたいと思います。

なお、企業や案件を特定できるレベルでの紹介はできないため一般知識レベルまで抽象化した事例の紹介となります。

良くある失敗例

失敗と言うとプロジェクト全体が破綻したりといったイメージを持たれるかもしれませんが、ここでの失敗は「想定よりも評価が低かった」「想定外の遅延が発生してしまった」など、ちょっと残念なところが生じてしまうことも含みます。

  • DX推進担当者などごく少数グループ内では大好評の施策だったが、全社展開に向けてプレゼンしたところ各事業部の責任者はあまり前向きではなく出るのはリスクの話ばかり。結果的に当初の想定から規模を大幅に縮小しての展開となってしまった。
  • リスキリングを進めるため全社向けのセミナーや学習補助の施策など至れり尽くせりの環境を用意したが、勉強に取り組み成果を出しているのはごく一部のメンバーのみ。その他大勢は既存業務が忙しいなどの理由で進みが遅くリスキリングの組織目標を達成することができそうにない。
  • 業務現場の効率化が可能となるアプリを開発したが導入段階でユーザー説明会を開催したところ大多数が非協力的。システム化の都合による業務フロー見直しなども必要となるがユーザーが非協力的なため運用開始に至るまでに想定以上の期間と予算を要してしまった。導入後は業務改善も見られユーザーの習熟度が上がるにつれ否定的な意見も減り手のひら返しで感謝のメッセージも届くようになった。

これらはそれなりの年数ビジネスに関わっている方であればどこかしらで経験されているのではと思います。「担当者とその他大勢の温度差」「組織全体に定着させる難しさ」「スピード感の無い展開」です。

最終的には「成功」に辿り着いたとしてもスピード感が失われてはビジネス上の機会損失にもなりますしライバル組織に負けてしまう要因にもなり得ます。

失敗を防止するためにケアすること

ビジネスにおいて失敗というのは日常茶飯事です。必要以上に恐れる必要はありませんが「失敗を防止する」「成功率をできる限り上げる」といった取組は大切です。では、具体的にどういった事に気を付ければ良いのでしょうか。

「絶対」の「思い込み」を排除する

まず一番大切な事は「絶対」の「思い込み」を排除することだと思います。特に組織に対する提案において「私が考える最高の提案」はある人にとっては最高ではないでしょう。「組織全員が自分とおなじコピー人間」であるなら拍手喝采で歓迎されるでしょうが、様々なバックグラウンドを持つ人達を相手に全員にとって共通の最高というのはまず無いものです。

厄介な人間の習性としていちど「絶対にいける!」と思い込んでしまうと、視野が狭まり他の可能性をケアするという行動が疎かになってしまう事があります。時には思い込みの力で強く前に進むことも有効かも知れませんが、多くの場合視野を狭くしてしまう事は失敗に直結します。

外堀を埋める意識を持つ

「組織全員が自分とおなじコピー人間」というのは無理な話ですし目指すべきところではないですが、それに少しでも近い形に持っていくことができれば「いけると思っていた提案を大きく外す」という失敗はしなくなるでしょう。普段から関係者に対する「情報提供」「根回し」「啓蒙活動」を積極的に行い理解を深めておくのはビジネス一般でも基本ですね。

自分の考えを広めるだけでなく、組織や関係者の考えやバックグラウンドをインプットすることも忘れないようにしたいです。合意は「相手が私に近づく」「私が相手に近づく」の両面によるものです。他者の考えやバックグラウンドをインプットすることによる学びも貴重であり、より良い提案にブラッシュアップすることもできるようになります。

時間がかかる想定を持つ

外堀を埋める工程にはとにかく時間がかかります。特に全社を巻き込んだDX推進となると、「情報提供」「根回し」「啓蒙活動」の情報が伝播し定着するまでにかなりの時間がかかるでしょう。「私が考える最高の提案」さえあればトントン拍子に事が進む事などあり得ません。はじめから時間がかかる想定でじっくり腰を据えて取り組める計画としておくことで予算切れや中だるみによるモチベーション低下も防止できるでしょう。

世の中にはDX推進の成功事例が多数紹介されています。そういった情報を見るとつい早くに結果を出そうと焦ってしまいますが十分な下地が無い状況で広範囲に対して大きな事をやろうとしても空回りするだけです。本当に早期にDX推進に成功しているとしたら、その組織はDXという単語が普及するかなり前からコツコツと下地を築いてきたのでしょう。

良い情報を抱え込まずシェアする

「私が考える最高の提案」「私が作る最高のアプリ」というような「私が」という意識が高まっているときほど良い情報を自分だけで抱え込んでしまいがちです。こういった事をしてしまうと自分と組織内の他者のバックグラウンドに大きなギャップが生まれてしまいます。いざお披露目となった時に全く提案が刺さらなかったり周囲がついてこないといった失敗の原因となります。

ビジネスにおいて情報は自分だけで囲い込む優位性よりも、組織内にシェアして「啓蒙活動」のツールとして使用する優位性のほうが勝ります。情報を囲い込んで自分だけがちょっと優位に立つよりも、組織を動かす流れを作る事に貢献するほうが個人のキャリアとしても優れていると思います。

大きな提案ほど、成功させるには多くの仲間が必要です。情報をシェアすることで仲間も増えより有利に事を進めることも可能になるでしょう。

とは言え啓蒙活動にはコンテンツ制作など多大な労力を要します。私が運営しているYouTubeチャンネルの動画も、ひとりで黙々と勉強する為だけでなく、良いと思ったものは積極的に組織にシェアして啓蒙活動のツールとしてお役立ていただけると嬉しいです。

人間は変化を嫌う

「最新のITシステムを全社導入!」のように仕事環境が大きく変化することを多くの人は嫌います。まず反射的に非協力的なふるまいをします。リスクの事や仕事のオペレーションが変わる大変さなどもっともらしい事を述べて環境の変化を先延ばしにしようとします。これは人間の本能的な、ある意味自然なふるまいです。

ITシステムの場合、システムエンジニアでもない方からすると「どういった仕組みで動いているのか」「難しそうだが自分達に習得できるのか」「何かあった時に自分達で問題解決できるのか」といったような恐怖に近い感情が先立ってしまいます。

これが推進側の担当者はワクワクでハイテンションなのにユーザーのテンションが異常に低いギャップの主な原因です。

特に管理職以上の上級職になるほど一般的にユーザーが変化に弱いことを熟知していますし、また自身の力の及ばない仕組みの導入にも恐怖を感じやすいと思います。変化を恐れさせない為にも日頃から必要知識の情報をシェアしていきましょう。

近年のITシステムはMicrosoft 365 / Power Platformなどを活用したローコードの仕組みが充実しており、比較的簡単に短期間でプロトタイプを開発して展開することが可能です。

例えば業務アプリを導入する場合、一発目から長期間かけて凄いアプリを開発していきなり展開するのではなく、業務影響が小さい小規模アプリを早期に展開し、まずは「仕事環境の小さな変化」に慣れてもらうといったやり方もおすすめです。

いきなり大きな変化・成果を狙わずロードマップ前半には啓蒙活動の一環として外堀を埋める仕掛けも組み込んで確実に推進していきましょう。

有識者の力を借りる

ここまで色々と書いてきたことを振り返ると「が考える最高の提案」というもの自体が怪しい代物に見えてきます。自身の思い込みを排除した組織に受け入れられる提案、啓蒙活動や根回しを通して完成した提案はあなたが推進した結果の「私達が考える最善の提案」になっているはずです。

これまで挙げた取り組みを1人でやり切ることは難しいでしょう。組織内の有識者の力は積極的に借りていきましょう。ここで言う有識者というのは役職やキャリアだけではなく、様々なポジションにおけるキーパーソンです。啓蒙活動ひとつとってもトップダウンでおこなうもの、ボトムアップでおこなうものなど様々で、経営層の立場から発信してもらったほうが良い内容もあれば、業務現場で協力し合って勉強会を開催し知識を深めるといった取り組みもあるでしょう。

最近流行りの生成AI(ChatGPTなど)と会話してみるのも良いかもしれません。AIの回答内容そのものが役に立つかは別として壁打ち相手が居ることで自身の取り組みを客観的に評価し思い込みを排除するキッカケにはなると思います。

IT人材不足が叫ばれる中、活動初期の技術習得やテクニカルな観点での意思決定においては組織内のメンバーだけでは力不足により十分なスピードが出せないことも多いと思います。これは宣伝になりますがMicrosoft 365やPower Platformの利活用・ユーザー教育・啓蒙活動がテーマであれば当方もお役に立てると思いますので是非お問い合わせください!多くの企業をサポートし様々な状況に立ち会った経験から客観的なご提案が可能です。企画段階などの早期からご相談いただくことで思い込み排除や遠回り回避にも貢献できると思います。

まとめ

失敗のパターンや対処に関してはまだまだ書ききれないところはあるのですが、よくある話のレベルでサクッとまとめてみました。

もちろん、小規模な業務改善をするためだけにここに挙げた全てを完璧にこなす必要はないと思いますし、既に組織の共通認識である事柄の啓蒙活動は省略可能な場合も多いです。そのあたりはやろうとしている事の影響範囲や組織の状態に合わせて適切な加減をしてください。少なくとも情報のシェアだけは出し惜しみすることなく継続する癖をつけましょう。

私自身もYouTube動画を制作したりアプリ開発を行う際に、いったんモノづくりのスイッチが入ってしまうと「思い込み」により視野が狭くなってしまうことが稀にあります。お客様に良いサービスが提供できるよう、お客様への理解を深めることも怠らないよう引き続き気を付けたいと思います。

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